新聞記者、辞めました。

新聞記者、辞めました。

新聞記者、辞めました。でもなんやかんや新聞やメディアが好き。社会のいろんなこと考えていたいゆとりの戯れ言。

「あなたは警部さんにいつもまたがっている記者ね」と言われて死ぬほど腹立った話<#5>

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2018年春、当時の財務事務次官テレビ朝日の女性記者にせまったセクハラ事件

週刊誌への告発をきっかけに、連日ワイドショーでも取り上げられた。

その後、メディアで働く女性記者たちが自らの体験を語る連載特集をしたり、本が出版されたりもした。

 

その頃、私はもう新聞記者ではなくなっていた。

けれど、このニュースが燃え上がるのと同じぐらいの勢いで、毎日、ゼミの同期で某・新聞者記者の友人(女)とLINE電話で語り合った。

このタイトルのエピソードも。

 

私は記者時代、身体的接触といったあからさまなセクハラはされたことはない。

地方新聞社の新人で、大した仕事をやっていなかったっていうこともある。

たまに、「ん?(💢)」って思うことを言われたぐらい。

 

そういう些細なことではあるんだけど、それを「大したことない」「記者だからしょうがない」って割り切れれば楽だろうなって、ずっと思ってきた。

27歳の今も、23歳だった当時も。

 

割り切れなかったので私は今、東京で、このnoteを書いています。

 

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社会部のサツ担に配属されて約1ヵ月。

自分が担当する所轄署の朝回りと夜回り、発生モノ(事件事故)の対応、交通安全イベントの取材などで、毎日クタクタになっていた。

 

その中で1番嫌いだった仕事が、そう、署回り

本当に、本当に本当に苦手だった。もう一生やりたくない。

 

発生モノでもあればまだいいけど、こんな田舎で大きな事件事故なんてそうそうない。

強面で仏頂面のおじさんと毎日話すことなんてないし、今動いているネタが有るのか無いのかさえもわからない。

っていうか”ネタ”って具体的にどんな話を指すのかすらも知らない。

右も左も分からない私にとっては、毎朝挨拶しに行って、毎晩、どうにか見つけた話題を投げかけて(ドラマやスポーツとか)、どうにか話が続くようにびくびくしながら相槌を打つのが精一杯。

これが署回りと言えるのかはさておき。(だって誰も署回りなんて教えてくれないんだもん!!!!)

 

当時、私の対応に当たってくれていた警察官の皆さんには、さぞ「ちょろい新人が来たな~」「毎日毎日何しに来てんだあいつ」と思われていたことでしょう。

 

横山秀夫今野敏の警察小説が読むのが好きなんだけど、今でもちょっと胸が苦しくなるんです。

署のトイレで待ち伏せしとくとか、深夜に庁舎を張り込んでるってバレないように、車中で男女の記者2人でカップル装ってイチャイチャしだすとか…そんなんできっこないわ(涙)。

 

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「あなたは警部さんにいつもまたがっている記者ね」

 

こうタイトルの言葉を私に言ってきたのは、警察官でも同業者でもない。

 

ある交通事故が起きて、その対応取材に当たっていたときのこと。

交通系インフラの民間企業に取材をしに行ったときに、担当者にいきなり初対面でこう言われた。

 

またがってる?!…またがってる…跨ってる…ってさ、、、、下ネタですよね?

なんか他に隠語あるの?とかぐるぐる考えたけど全然思いつかない。

 

この言葉に出てくる「警部さん」とは、私が担当の所轄署の副署長のこと。

副署長=報道対応者なので、関係を密にしておくことが求められる。

私はこの「警部さん」のもとにも、毎朝毎昼毎夕毎晩通いつめていた。

副署長が昔、私の地元の署にいたときの事件のことを話してくれたりして、私の中では1番関係を築けていた副署長だった。

 

もしかしたらネクスk…あっいや、交通系インフラの民間企業の担当者(たぶん40代)は、そうやって毎日署に遊びに()来ては、ニコニコ楽しそうにおじさん警部と話す私を見掛けていたのかもしれない。

 

つまり、「お前は警察官に気に入られるために寝てるんだろ」ってことを、、私に、、言ったって、、、、ことですよね?????

 

はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ???????

寝てねーーーーーーーーわ!!!!!!!

 

 

なんてブチ切れることができるのは今になってからなんですよね、悲しいことに。

23歳の社会人1年生が、初対面の40代ぐらいの男性にそんなこと言われても「はぁ…。あはは~」としか愛想笑いできなかった。

できることは、さっさと取材を終わらせて帰ることだけ。

取材中も、心なしか馬鹿にしたような態度で臨まれた気がする。

 

 

つらかったなー。

 

 

署回りデビューする前に、デスクに言われたことを思い出す。

 

「警察の人と関係を築けていったとしても、絶対に、女性であることを武器にするようなネタのとり方はしないように。」

 

昔からそういうふうにネタを取ってきた先輩女性記者がいるのか、とか

女性記者と幹部警察官との関係はそういう風潮があるのが周知の事実だからなのか、

だから、わたしはネクスk…あっもういいや。まあその担当者が私に言ってきたんだと無理くり理由を考えてみたんだけど、やっぱり心のもやもやは晴れなかった。

 

もしかしたら、デスクの言葉はダチョウ倶楽部の「押すなよ押すなよ」理論で、「俺はまあ上司として一応”忠告した”というポーズは取っておくが。わかったな。」っていう意味が込められていたのかもしれない。

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やっぱり、こういうもやもやは、同じ境遇を経験したであろう人に相談するのが得策だ。

そこで、私の1期上の女性の先輩に相談した。

その先輩も1年前、私と同じように社会人1年目でサツ担、私と同じ署を担当していた。つまり、彼女の去年1年間をトレースすればなんとかやっていけると思ったからだ。

 

何かとデスクも、「仕事でも仕事以外でも、何かわからないことがあったら〇〇(その先輩)に相談するといいぞ」って言われていた。

先輩はもうサツ担では無いが、年も近いし、彼女にとったら自分の分身みたいな後輩の私をいろいろと気にかけてくれていた。

ネク●コの担当者の言葉は流石にひどいと、きっと、慰めてくれるだろうと思った。

 

 

結論:甘かった。

 

 

優しい言葉遣いながらも、気が強い性格が現れる口調の彼女は、こう言った。

 

「そうは言ってもネタ取らないと、一緒だよね。

今の獅子は、無料でキャバクラをやってあげているみたいなものだからね。」

 

 

 

正論パーーーーーンチ!!

 

 

確かに、署回りを始めてから約1ヵ月、独自ネタらしいネタなんて何1つ取っていない。

毎晩毎晩、自分と仲良くなりたがっている若い娘がやって来ては、仕事の武勇伝や家族の話をニコニコと聞いてくれる。

新聞社に入っていたはずなのに、どうやらわたしはキャバクラに就職していたようでした。

 

 

学生時代にジャーナリズムを学んで、たぶんどの同期よりも高い志を持って新聞社に入った私にとって、先輩の「キャバ嬢と同じ」発言は、それが例え先輩は本気でそう思っていなかったとしても、私の心の中に“新聞記者”という仕事に対する大きな不信感を植え付けた。

 

 

――キャバ嬢はキャバ嬢でも、独自ネタ取ったら新聞記者になれるんでしょ?

 

 

次の日から、私は、深いVネックのブラウスをよく着るようになった。

 

 

<続く>