新聞記者、辞めました。

新聞記者、辞めました。

新聞記者、辞めました。でもなんやかんや新聞やメディアが好き。社会のいろんなこと考えていたいゆとりの戯れ言。

「社会人1年目はみんな大変なんだよ」って言わないで。

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※「は?」って思う方もいると思いますが、ぽんこつでゆとりでヘタレな新聞記者1年目の経験からくる個人的見解なので、優しい心で読んでもらえるとうれしいです。

 

獅子まいこです。

もうすぐ7月。新社会人の人は、まもなく入社して3ヵ月。

今年の新入社員さんは、これまで誰も経験したことがない社会人1年目を過ごしていることと思います。

まだ1度も出社したことがない人もいると聞きます。

在宅ワークで、4~5月の1番不安な時期に相談したいときに隣に誰もいないのはそこはかとなく不安だったと思う。

新しい働き方がニューノーマルになっていく中で、上司と部下の関係性も変わっていくのかもしれないなあなんて思っています。

 

 

私が数年前、新卒で入社した新聞社は試用期間が3ヵ月。

7月1日に正式な辞令が交付されて、晴れて正式に社員(?)となりました。

すでに4月半ばから配属されていて、辞令もなにも毎日サツ回りでひぃひぃ言っていたので、晴れ晴れしさなんて1mmもない。

 

その辞令交付式で本社に集められて、久々に同期たち顔を合わせるんだけど、

私はストレスによるアレルギーの悪化で顔が腫れて真っ赤。

高校生から必死でアイプチして手に入れた二重幅も消失するほど、試合後のプロレスラーみたいなパンパンな顔になっていた。

ステロイド軟膏を顔面に塗りたくっているから化粧もできない。

ひどい顔を隠すためにマスクをつける。でも肌荒れしている頬とマスクが触れてヒリヒリして痛みとの戦いが始まる。

「せめてビューラーだけでも…!」という願い虚しく、まつげが上がる隙さえ与えない重量級のまぶた。

そういう日に限って写真撮影とかあるんだよね。まじ最悪。

マツエクして華やかなネイルまで施していた営業局の同期を呪い殺したくなった、散々な日でした。

 

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「社会人1年目はみんな大変なんだよ。」

 

新聞社に入社して1年目。

デスクや先輩、同い年の同期からも言われ続けた。

 

当時はもちろん、「そういうもんだよね」って信じていたし、2年後3年後の自分は同じことを後輩に言うようになっているんだろうと思っていた。

 

でも、ゆっくりこの言葉を噛みしめると「こんな無責任な言葉って他にある!?」ってことに気付く。

「大変」?だからな!ん!な!ん!だ!よ‼‼‼‼‼‼

 

仕事の悩み相談に対して、こんなに投げやりで浅い回答なんて他にある?

 

ハナから後輩の育成や人間関係構築に無関心な人の答えならいいんです。

もしくは、石原さとみ主演ドラマ『アンナチュラル』に出てくる、井浦新演じる中堂とかが言うならいいんですよ。

ものすごく仕事はできるけど、心に闇を抱えている。それを隠すため(かどうかは知らんけど)一貫して人に冷たい態度を取る。でもそれは優しさの裏返しでもある、みたいな。

 

「嫌ならさっさと辞めろ。クソが。」って1年目の後輩に吐き捨てたあとで、喫煙所で一人煙をくゆらせて意味深な遠い目をしながら、バックで『Lemon』が流れる。ええ、いいじゃないですか。

でも、実際の世界に中堂なんて居なければ、『Lemon』が流れることもないんですよ。

 

なにが言いたいかと言うと、「なんか最近悩みある?」って心配げに聞いておきながら、結局「1年目はみんな大変なんだ」に終着する。

なんだそれ!笑

 

「大変」?だからな!ん!な!ん!だ!よ‼‼‼‼‼‼(2回目

 

社会人1年目で社会部警察担当になって、右も左もわからないままデスクに副署長に怒られまくって心も体もボロボロの毎日で。

新聞記者になることは自分で選んだ道だけど、「自分で選んだ道だから」では乗り越えられないような仕事と、自分が崩れそうなギリギリのラインで毎日戦っている。

 

「来年になれば楽になる」って、頭ではわかっている。

だって、23年間の人生の中で、似たようなことはたくさんあったから。

 

例えば、大学1年生のとき。人生初バイトで、カフェで働き始めたとき、ミスばっかりで店長に怒られまくって辞めたいって思ったけど、3ヶ月後には店長のミスを指摘できるほど冷静にまわりを見れるまでになった。

例えば、中学1年生のとき。小学校からの友達が誰も居ないテニス部に入って、なかなか溶け込めなくてつらかった。でもやっぱりいつの間にか全員と友達になっていて、土日の練習後には毎回チャリ漕いでプリクラ撮りに行っていた。

 

だから、大変な思いをしているこの「今」も、時が経てばいつか「過去」になるよって。

わかっている。

だからって、明日からサツまわりが楽しくなることなんてない。

つらいこの「今」が無くなることなんてない。

人生から逃げ出したい気持ちから、逃れることなんてできないのに。

あなたに私の苦しみを打ち明けたのは、そんな誰でも知っていることを教えてもらうためじゃなかった。
私のこの「今」の苦しみに、ちょっとでもいいから寄り添ってもらいたかった。

 

「今、仕事がつらい」っていう悩みに対して「1年目はみんなつらい」って答える人は、

学校の子どものいじめ問題に対して「誰しもそんな経験はあるよ」「ツライのは今だけだよ」って言いそうな思考回路を持っていそうなので、本能的に相容れないのかもしれない。

 

新聞社に限らないと思うけど、新人研修のときに「社内で知り得たことは友人にも家族にも口外するな」ってめちゃくちゃ厳しく言われる。

それはもちろん、守秘義務やネタが漏れることを防止する意味で非常に重要。

でもその規約を真正面からまっすぐに受け止めてしまうと、仕事に起因する悩みは母親にすら相談することもできなくなってしまう。だから仕事の相談は同僚にするしかない。

その結果「1年目はみんな大変なんだ」で悩みはなかったことにされるという、この絶望感といったら。

 

だから、お願いだから、「1年目はみんな大変なんだよ。」って言わないでほしい。

 

在宅ワークが少しずつ浸透してきて、リモート会議が当たり前になっている今。

今年の新入社員が経験した悩みはきっと、あなたが思う1年目のつらさとは絶対に違う。

「みんな大変」なんて言葉で片付けないでほしい。

 

私はフリーランスになって、後輩として新卒の人と接することはもうないかもしれない。

でも、私は今でも、絶対にこの言葉は使わないって決めているし、

この言葉を口にする人は、そっと距離をとるようにしている。

いつか自分がその人の言葉で傷つくのが怖いから。

 

きっと悪意はないと思うんだけど、

悪意ある悪意ではなくて、悪意がない悪意に死ぬほど苦しめられてきたタチなので、人に同じ苦しみを味わわせないためにそうしています。

 

私も悪意ない悪意で人を傷つけてしまっていること、たくさんある。

だけどせめて、目の前にいる名前も顔も知っている大切な人が、心の弱い部分をさらけ出して来てくれたときぐらい、ちゃんと隣りに座って、同じ目の高さで話を聞ける人でありたいと思っている。

 

獅子まいこでした。