新聞記者、辞めました。

新聞記者、辞めました。

新聞記者、辞めました。でもなんやかんや新聞やメディアが好き。社会のいろんなこと考えていたいゆとりの戯れ言。

「社会人1年目はみんな大変なんだよ」って言わないで。

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※「は?」って思う方もいると思いますが、ぽんこつでゆとりでヘタレな新聞記者1年目の経験からくる個人的見解なので、優しい心で読んでもらえるとうれしいです。

 

獅子まいこです。

もうすぐ7月。新社会人の人は、まもなく入社して3ヵ月。

今年の新入社員さんは、これまで誰も経験したことがない社会人1年目を過ごしていることと思います。

まだ1度も出社したことがない人もいると聞きます。

在宅ワークで、4~5月の1番不安な時期に相談したいときに隣に誰もいないのはそこはかとなく不安だったと思う。

新しい働き方がニューノーマルになっていく中で、上司と部下の関係性も変わっていくのかもしれないなあなんて思っています。

 

 

私が数年前、新卒で入社した新聞社は試用期間が3ヵ月。

7月1日に正式な辞令が交付されて、晴れて正式に社員(?)となりました。

すでに4月半ばから配属されていて、辞令もなにも毎日サツ回りでひぃひぃ言っていたので、晴れ晴れしさなんて1mmもない。

 

その辞令交付式で本社に集められて、久々に同期たち顔を合わせるんだけど、

私はストレスによるアレルギーの悪化で顔が腫れて真っ赤。

高校生から必死でアイプチして手に入れた二重幅も消失するほど、試合後のプロレスラーみたいなパンパンな顔になっていた。

ステロイド軟膏を顔面に塗りたくっているから化粧もできない。

ひどい顔を隠すためにマスクをつける。でも肌荒れしている頬とマスクが触れてヒリヒリして痛みとの戦いが始まる。

「せめてビューラーだけでも…!」という願い虚しく、まつげが上がる隙さえ与えない重量級のまぶた。

そういう日に限って写真撮影とかあるんだよね。まじ最悪。

マツエクして華やかなネイルまで施していた営業局の同期を呪い殺したくなった、散々な日でした。

 

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「社会人1年目はみんな大変なんだよ。」

 

新聞社に入社して1年目。

デスクや先輩、同い年の同期からも言われ続けた。

 

当時はもちろん、「そういうもんだよね」って信じていたし、2年後3年後の自分は同じことを後輩に言うようになっているんだろうと思っていた。

 

でも、ゆっくりこの言葉を噛みしめると「こんな無責任な言葉って他にある!?」ってことに気付く。

「大変」?だからな!ん!な!ん!だ!よ‼‼‼‼‼‼

 

仕事の悩み相談に対して、こんなに投げやりで浅い回答なんて他にある?

 

ハナから後輩の育成や人間関係構築に無関心な人の答えならいいんです。

もしくは、石原さとみ主演ドラマ『アンナチュラル』に出てくる、井浦新演じる中堂とかが言うならいいんですよ。

ものすごく仕事はできるけど、心に闇を抱えている。それを隠すため(かどうかは知らんけど)一貫して人に冷たい態度を取る。でもそれは優しさの裏返しでもある、みたいな。

 

「嫌ならさっさと辞めろ。クソが。」って1年目の後輩に吐き捨てたあとで、喫煙所で一人煙をくゆらせて意味深な遠い目をしながら、バックで『Lemon』が流れる。ええ、いいじゃないですか。

でも、実際の世界に中堂なんて居なければ、『Lemon』が流れることもないんですよ。

 

なにが言いたいかと言うと、「なんか最近悩みある?」って心配げに聞いておきながら、結局「1年目はみんな大変なんだ」に終着する。

なんだそれ!笑

 

「大変」?だからな!ん!な!ん!だ!よ‼‼‼‼‼‼(2回目

 

社会人1年目で社会部警察担当になって、右も左もわからないままデスクに副署長に怒られまくって心も体もボロボロの毎日で。

新聞記者になることは自分で選んだ道だけど、「自分で選んだ道だから」では乗り越えられないような仕事と、自分が崩れそうなギリギリのラインで毎日戦っている。

 

「来年になれば楽になる」って、頭ではわかっている。

だって、23年間の人生の中で、似たようなことはたくさんあったから。

 

例えば、大学1年生のとき。人生初バイトで、カフェで働き始めたとき、ミスばっかりで店長に怒られまくって辞めたいって思ったけど、3ヶ月後には店長のミスを指摘できるほど冷静にまわりを見れるまでになった。

例えば、中学1年生のとき。小学校からの友達が誰も居ないテニス部に入って、なかなか溶け込めなくてつらかった。でもやっぱりいつの間にか全員と友達になっていて、土日の練習後には毎回チャリ漕いでプリクラ撮りに行っていた。

 

だから、大変な思いをしているこの「今」も、時が経てばいつか「過去」になるよって。

わかっている。

だからって、明日からサツまわりが楽しくなることなんてない。

つらいこの「今」が無くなることなんてない。

人生から逃げ出したい気持ちから、逃れることなんてできないのに。

あなたに私の苦しみを打ち明けたのは、そんな誰でも知っていることを教えてもらうためじゃなかった。
私のこの「今」の苦しみに、ちょっとでもいいから寄り添ってもらいたかった。

 

「今、仕事がつらい」っていう悩みに対して「1年目はみんなつらい」って答える人は、

学校の子どものいじめ問題に対して「誰しもそんな経験はあるよ」「ツライのは今だけだよ」って言いそうな思考回路を持っていそうなので、本能的に相容れないのかもしれない。

 

新聞社に限らないと思うけど、新人研修のときに「社内で知り得たことは友人にも家族にも口外するな」ってめちゃくちゃ厳しく言われる。

それはもちろん、守秘義務やネタが漏れることを防止する意味で非常に重要。

でもその規約を真正面からまっすぐに受け止めてしまうと、仕事に起因する悩みは母親にすら相談することもできなくなってしまう。だから仕事の相談は同僚にするしかない。

その結果「1年目はみんな大変なんだ」で悩みはなかったことにされるという、この絶望感といったら。

 

だから、お願いだから、「1年目はみんな大変なんだよ。」って言わないでほしい。

 

在宅ワークが少しずつ浸透してきて、リモート会議が当たり前になっている今。

今年の新入社員が経験した悩みはきっと、あなたが思う1年目のつらさとは絶対に違う。

「みんな大変」なんて言葉で片付けないでほしい。

 

私はフリーランスになって、後輩として新卒の人と接することはもうないかもしれない。

でも、私は今でも、絶対にこの言葉は使わないって決めているし、

この言葉を口にする人は、そっと距離をとるようにしている。

いつか自分がその人の言葉で傷つくのが怖いから。

 

きっと悪意はないと思うんだけど、

悪意ある悪意ではなくて、悪意がない悪意に死ぬほど苦しめられてきたタチなので、人に同じ苦しみを味わわせないためにそうしています。

 

私も悪意ない悪意で人を傷つけてしまっていること、たくさんある。

だけどせめて、目の前にいる名前も顔も知っている大切な人が、心の弱い部分をさらけ出して来てくれたときぐらい、ちゃんと隣りに座って、同じ目の高さで話を聞ける人でありたいと思っている。

 

獅子まいこでした。

記者になりたいと思った理由は、編集手帳だった。(竹内政明『名文どろぼう』)

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「なんで新聞記者になりたいって思ってたんだっけ…」

昨日の夜、寝る前に歯を磨きながらふと考えていた。

 

大学生のときのいろんな記憶がフラッシュバックみたいに呼び起こされて、洗面所を飛び出し歯ブラシをくわえたまま本棚でこの本を探した。

 

表紙をめくって、ほっとした。私の名前と直筆のサイン。

  

新聞記者になりたいって思った理由。

それは「彼みたいな文章を書きたい」って思ったからだった。

 

早々と新聞記者は辞めた。けど今でもその夢は追えているのがちょっとうれしかった。

 

 

編集手帳と出会った高校生

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高校生から漠然とマスコミの仕事をしたいと思っていた。

受験勉強の一環で、新聞の社説を切り抜いて要約するトレーニングをしていた。

 

そこで出会ったのが編集手帳だった。

 

当時、実家で購読していた新聞は読売新聞だった。

私が中学生ぐらいまでは毎日新聞を取っていたけど、ある時から読売に変わった。

主な理由は以下4つ。

・家の目の前に販売店ができた

・勧誘員に母が「娘(私)がプロ野球が好き」とほのめかすと、その日のうちにジャイアンツやタイガースのグッズをいっぱい持ってきた(私はライオンズファン)

・でもそれなりに嬉しかったし、スポーツ紙面が充実していたのも嬉しかった

・母は、定期的にビールやら洗剤やらをもらえるし、気分転換に読売に変えてもいいと思った

 

私の地元は田舎というのもあり、地元紙の覇権が強い。

学校の授業で新聞記事を持ち寄る課題があったときも、地元紙だった生徒は6~7割ぐらい占めていた。

全国紙の販売店にとってみたら、地元紙を購読していない世帯はレアで取り合いになっていたんだろうな…。

 

母は「全国紙の方がサービスいいから地元紙は取らない」と頑なに言っていた。

数年後、娘はその地元紙に就職することになるんですけどね。

 

東京ドームで雨に打たれた大学4年生

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高校卒業後、念願だった都会の大学に入学。ある先生との出会いをきっかけにジャーナリズムを学ぶゼミに入り、新聞記者を本格的に目指し始めた。

 

大学に入って初めて、「読売新聞の社説は、必ずしも正解を書いているわけではない」ことを知った。それでもやっぱり第一志望の座は読売だった。

 

「竹内さんみたいな編集手帳を書きたかったから。」

 

今でこそ、論説委員で一面コラムを書く記者がどれだけ優秀で選ばれた人であるかはわかるけど、大学生の自分にはそんなにわからなかった。(恥ずかしい)

 

ESでも面接でも「読売っ子」であることをアピールしようと画策していた私にとって、またとない”ネタ”ができる。

 

 

ゼミ全体で、日本記者クラブの学生会員になっていたので。ゼミ生全員で聴講しに行くことになった。

 

実はその日、当選していた東京ドームの読売ジャイアンツVSオリックス・バファローズの観戦ペアチケットの試合日だった。

これも読売新聞の懸賞かなんかで当たったものだった。

この世で一番聞きに行きたい講演会とブッキング。もちろん優先するのは講演会だけど、無料で野球が観られる運を無下にしたくなかった。

 

今日の観戦は無理でも、別の日の試合に変えてもらえるかもしれない。

東京メトロ霞が関駅のプレスセンターに行く前に、JR水道橋駅に向かった。

 

ハガキで当選通知が来たから、別の試合に変えてもらうにしろ、友人にあげるにしろ、最悪転売するにしろ、チケットカウンターでチケットに変えてもらわなければいけない。

 

東京ドームに到着した私は、チケットカウンターから伸びる長蛇の列に驚愕した。

 

「ま に あ わ な い」

 

この列の最後尾に並んでチケットを引き換えている頃には、もう講演会が始まっている…。

とりあえず列の最後尾に並んだ。

 

講演会に出席するために就活用ジャケットを着て就活用パンプスを履いている自分が、オレンジのユニフォームまみれの中で悪目立ちしている気がして居心地が悪い。

雨も降っていた気がする。

いろいろなものに耐えれそうになくて、10分ほどで列を離れた。

 

雨でしわしわになった当選ハガキをバッグにしまい、ライオンズについで2番目に好きだったバファローズへの未練を残し、後楽園駅へと向かった。

 

数年後、私は東京ドームに徒歩15分ぐらいで行けちゃう出版社に転職。東京メトロ南北線沿線に住んで、仕事終わりにお散歩がてら後楽園駅から帰ることになるんですけどね。人生ってわからないぜ。

 

大学4年のときに書いた作文と再会した今日

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講演回後、ゼミ生(正確にはマスコミ就活対策グループ的なメンバー)には課題が課された。

テーマは「記者クラブ受賞講演を聞いて」。

これは、マスコミ就活で必ず課される作文試験への対策の一環だった。

 

ドライブに残っていたので、そのまま転載してみます。

(どんだけ野球好きなんだよ、って内容なのはどうしてかというと、読売の作文試験でも流用できるようにしているためなんです。笑)

 

「日の当たらない人」へ。

 2011年10月12日の朝。生まれて初めて、私は新聞を読んで泣いた。数日前、応援している西武ライオンズ石井義人選手が戦力外通告を受けたことを知り、憔悴していたときであった。その日の朝刊1面の「編集手帳」は、映画監督・新藤兼人氏の言葉から始まる。「思い切り自分を投げ出すことができれば、それが仕合わせなのである。」 戦力外通告を受けた選手らへのエールだった。ひたむきに白球を追いかけていた石井選手の姿が浮かぶ。私が思うよりも遥かにつらく、悔しく、大きな壁にぶつかり、未来が見えない不安を抱えた選手たち。そんな彼らへ向けられたコラムは、このような言葉で終わる。「人の一生は一度しかないのだから、燃えることのできるところで、燃えつきるまで燃えなければいけない。」

 2015年度日本記者クラブ賞を受賞した読売新聞論説委員の竹内政明さんは、14年間もの間「編集手帳」を書き続けてきた。竹内氏は授賞講演の際、「私のコラムは“へそ曲がり”と言われる」と語った。幸せな人間は放っておいてもいい。日の当たらない人、不幸せな人にこそより多くの言葉をかけたいのだ、と。

 ふと、高校生の頃に読んで泣いてしまったコラムを思い出す。今でも忘れられない、「好きな道に思い切り自分を投げ出した、その誇りを胸に、新たな一歩を踏み出してほしい」という文章は、竹内さんの思いが詰まったものだったと知った。石井選手はその後、2012年に巨人に移籍する。「代打の切り札」としてチームを優勝に導き、CSファイナルステージではMVPに輝いた。「編集手帳」に心が救われた人は、数えられないほどいるだろう。石井選手も、その一人だったのではないだろうか。

 「『編集手帳』のような文章を書いて人に読んでもらいたい」と思ったのが、新聞記者を志すきっかけだった。誰かの「再起を祈る」記事を書き、そしてその思いを届けたい。

 

「竹内さんを目指したい」と再確認したこれから

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読売新聞には受からなかった。

ものすごくつらかった。

 

でも、地元紙に運良く拾われて、憧れていた新聞記者になった。

 

新聞記者にはなれた。でもすぐに、私はそこで戦うことを自ら辞めた。

 

夢とか目標とか。努力とか向上心とか。

そんなものは全部、社会の波に揉まれて海の藻屑となった。笑

 

就活中のESでとか、作文とか読み返すと、総じて青臭い。

それはなぜかと言うと中身がないから。

そして、自分には新聞記者への適正がなかったと身を持って知っているから。

何度も過去の自分の夢や目標に裏切られてきた。

 

でも、この「記者クラブ受賞講演を聞いて」の作文は、「新聞記者になりたい」とは書いていなかった。

過去の自分に裏切られなかった。なんか、それが少し救いだった。

 

「彼みたいな文章を書きたい」って思っていることは、今でも変わらない。

むしろフリーランスになった今が一番、その夢に近いところにいる気がしている。

 

 

5年前の自分はこう言っていた。

 

誰かの「再起を祈る」記事を書き、そしてその思いを届けたい。

 

まずは、フリーランスとして再出発した、自分自身の再起を祈るためにこの記事を。

 

BOOK Information

名文どろぼう

著者:竹内政明

出版社:文藝春秋

出版年:2010/3/18

 

www.amazon.co.jp

 

 

記者を目指す学生さんへ。

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(勢いで偉そうなタイトルとよくわからんアイキャッチ画にしてしまった…)

 

約1ヵ月前、とある大学生からメッセージが飛んできました。

 

彼女は現在大学4年生で記者を目指して就活中。

私のnoteの記事を読んで、相談に乗ってほしいと…!

 

こんな私を頼ってくれるなんて…と心の底から嬉しかった半面、

 

私でいいのか…?

 

例えば、今記者2年目で仕事がつらくてしんどい、辞めたい。。。っていう人なら、一緒に会社のグチでも言って合って盛り上がったらいいんだけど…

 

就活生・・・・・!

 

こんなゆとり・ポンコツ・ヘタレ記者で、新聞社の闇を味わった私の話でいいのか…?と不安に思った。

 

でも、ふと自分の自己紹介記事の1文を思い出す。

 

マスコミを目指している学生さんたちの目に留まったとしたら、ポンコツ記者の過去を読んでも日和らず、目標を変えないのであれば、ものすごいエース記者になれると思うので頑張ってほしいです。

 

yutori-zaregoto.hatenablog.com

 

彼女なら大丈夫だ。

現役記者が実名と社名を出してTwitterやっている中、そうじゃなくて辞めた私にコンタクトを取ってくれた意味が必ずそこにはあると思った。

変に気を遣わずありのままの私の経験や思ったことをお話ししようと思いました。

 

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私が記者になって2年目ぐらいかな~。仲の良い友人(女)とLINE電話していた時のこと。

彼女とはゼミ同期生で、同じくジャーナリズムを学んできた盟友(!)の1人。そして彼女も某新聞社の記者。

私たちのゼミの先生も元新聞記者で、ゼミ生たちの就活もめちゃくちゃお世話してくれた。

ゼミや授業でいろんな新聞社の現役バリバリのエース記者と会う機会を何度も作ってくれて、当時は目をキラキラさせながら話を聞いて、記者への憧れを強くしたな~…なんて。

彼女と当時の話を振り返りながら、予想を上回るしんどさの新人記者の今の生活を嘆いていた。

 

そのとき、彼女はこうつぶやいた。

「先生さ。新聞記者のカッコいいところしか私たちに見せなかったよね。

別に意図的にそうしてたわけじゃなくて、先生も優秀な記者だったから、私たちが将来こうなることがわからなかったっていうか…。学生時代にちょっとでもいいから、かっこよくない姿や、理想と現実は違うぞってことを知っておけたらましだったかもね

 

確かに、私たちが会った記者は総じて優秀過ぎる人だったのかもしれない。

そうじゃなくて、ちょっとポンコツな記者さんに会う機会があっても良かったよね~なんて笑って話をした。

 

そして今、私がポンコツ記者役を担う時が来た…!

…あ、役じゃないわ、本人出演で。

 

マスコミに限らず、就活生がやっとの思いで手に入れた内定だったのに、入社すると理想と違い過ぎてすぐ辞める、みたいな話はよく聞く。

(私もそのうちの1人)

 

私はそういう人生もおおいにアリだと思うから、個人的には全くいいと思うんだけど、会社は採用活動の費用損するし、本人もその後の転職活動とかうまくいかないかもしれない。

 

そんなミスマッチングをできる限り減らすためにも、学生時代にポンコツ役と出会っておくことって大事なんじゃないかなと思った。

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私に相談をしてくれた記者志望の彼女は、文章だけのやりとりだけだけど、少し私と似た部分を持ってるタイプだと感じた。

それはポンコツ・ヘタレの部分じゃなくて、“自分の中に曲げられない筋がある”こと。

 

 社会に出ると、それは曲げなきゃいけないこともあるんだけど。

それを承知の上で、それでも”記者になりたい”って思う彼女の筋は、そうそう切れないと思う。

…ってまあ、偉そうにこんなこと語ってしまうのはも失礼なのでこの辺でやめておきます。

  

新聞記者志望のみなさん。

不安になったら、私のnoteでも読みに遊びに来てください。

こんなやつでも、記者になれることはなれます。

 

就活生のみなさん。今年の就活は本当に大変なことばかりだと思うけど、

きっとうまくいきます。なるようになります。

応援しています。

 

 

獅子まいこでした。

サツ担の先輩の無慈悲な言葉に心折れた話<#6>


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新聞社の内部って、人狼ゲームだよね。

誰を信じたら良いのかマジでわからなかった。

 

「年が近いから」「同じ大学出身だから」っていう共通点に乗せられて、こちらが勝手に信頼して背中を見せようもんなら、すぐさま人狼の餌食にされる。

 

「相談に乗るよ?」「しんどいことない?」って菩薩のような微笑みで近寄って来ては、心は般若の顔で私の弱点を探ってくる。

(弱点=会社への不満、上司への愚痴、仕事でのミス)

 

その握った弱点を武器に、私の上司に「〇〇さんのことこんな風に言ってました」って取り入ったり、私の後輩に「あいつはポンコツ」と吹き込んで自分のシンパを形成し、私を孤立させていく。

 

「会社の人間関係というものは、表面上はいい関係に見えて本当は殺伐としていて、誰も信じられない」という事実は、当時23歳の私には耐え難く苦しいことだった。

 

…まあ、この会社の雰囲気が悪いせいだけではなくて、そもそも”コミュ力お化けで根っからの陽キャ”みたいな人以外にとってみたら、会社はそういうものなのかなあと思ったりもする。

(社会人2年目の冬に転職した東京の出版社は、人狼ゲームなんてもの開催していなくて、とても良好な人間関係を築ける会社だったけど。)

 

あの新聞社が異常なのか、私のポンコツ・ヘタレ具合が異常だったのか、それともその両方なのか…。

 

それにしてもここ最近、私がいた新聞社に限らず、全国紙・地方紙ともに「20代の若い世代の退職率が上がり過ぎてヤバい」という噂を聞いても、全く意外性がないほどには納得しています。

 

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サツ担の先輩で、同じ大学出身のTさん(男)。5歳上。

 

Tさんの第一印象は、「カッコいい人」だった。

 

ほぼ毎日顔を合わせていたが、野暮ったい日が1日も無い。

スラックスのお尻ポケットからちょこんと三角形に見えている、ハンカチの柄が「今日もおしゃれだな~」と思っていた。

自分でもイケメンなのは自覚しているようで、「最近三浦春馬が僕の髪型に寄せてきている」とか言っちゃう人だった。

そういうときは私はちゃんと「たしかに~めっちゃ似てますもんね~」と言ってあげていた。

 

左手薬指には指輪が光っていて、その相手は県内の支局にいる年上の先輩記者だと聞き、「まあこんなイケメン、ほっとかれるわけ無いわな~」とか思いつつ、

社内結婚とか、もし会社倒産したらどうするんだろ~」とか真面目に心配していた。

 

Tさんとは同じ大学の出身だった。

会社にこの大学出身の人は私とTさんの2人だけで、同じ期間に在学はしていないが、勝手に親近感を持っていた。

 

 

サツ担に配属されて数週間後、Tさんと同じ休日出番の日があった。

 

お昼休憩になり、2人で近くの喫茶店に行く道中、Tさんから「こないだのデスクとキャップからの電話、大丈夫だった?」と聞かれた。

 

――鬼電事件。

 

前の週の日曜日の夜、20時ぐらいだったと記憶している。

副署長やデスクに怒られた記憶が頭から離れず、明日からの出勤がイヤでイヤで鬱々としていた。

寝室のベッドで寝転び、スマホに入っている音楽をイヤホンで大音量で聞いていた。

自分の心をJ-POPの力を借りて上手に騙し、どうにか生きる気力を見出していた。

 

気づくと30分ほど経っていたんだと思う。

 

イヤホンの向こう側で、なにかの音がする。

 

―――リビングのテレビつけっぱなしだった?

―――いや、ベルの音…

―――あ“あ”あ“!!!社用ケータイが鳴ってる!!!!!

 

社用ケータイはリビングのテーブルの上で充電していた。

慌てて飛び起きてリビングに向かい、すべり落ちそうになりながら電話を取ると、キャップからだった。

 

「おお、良かった。出たか。〇〇デスクに、電話して」

いつもと変わらないテンションと口調でキャップはそう言うと、電話を切った。

 

―――????

 

着信履歴を見ると、そこには地獄が広がっていた。

20:05 不在着信 〇〇デスク

20:07 不在着信 〇〇デスク

20:10 不在着信 〇〇デスク

20:13 不在着信 〇〇デスク

20:14 不在着信 〇〇デスク

20:17 不在着信 〇〇デスク

20:19 不在着信 〇〇デスク

20:22 不在着信 〇〇デスク

20:24 不在着信 〇〇デスク

20:26 不在着信 ■■キャップ

20:28 不在着信 〇〇デスク

20:31 不在着信 〇〇デスク

20:32 不在着信 〇〇デスク

20:33 不在着信 ■■キャップ

 

―――死んだ。

 

イヤホンで音楽を爆音で聴いていたせいで、鬼着信に全く気づかなかった。

 

―――担当署でなんか事件があったんだーーーうあわーーーーーーーー

 

サツ担の重要な任務の1つ、「ケータイを肌身離さないこと」。

いつどこで事件や事故が起きてもすぐに対応できるように、サツ担配属直後から言われていたことだった。

深夜でも早朝でも、お風呂に入っていても、運転中でも。もちろん休日も関係ない。

 

―――まーた大きなヘマをやらかしてしまった。。。

 

社用ケータイを持ったまま後ろに卒倒しそうになるのをこらえながら、おそるおそるデスクに電話をかけた。

 

 『何してた?』

 

「えっと、すみません、、、お風呂に入っていました」

 

「明日からの仕事が嫌なので、爆音で音楽を聴いて現実逃避してました」とは流石に言えず、「ケータイの着信気づかないシーン第1位(私調べ)」の「お風呂入ってました」と、とっさに嘘をついた。

 

そこから、延々と説教タイム。

デスクは声を荒げたりするタイプではなく、静かに怒る人だった。

それが異様に怖くてつらくて、心の弱いところをピンポイントに攻めてこられた。

 

私に電話が繋がらないことを不審に思い、キャップにも連絡をしていたようだった。

 

一通り怒り通した後、やっと本題に入る。

なんの事件が起きたの?私の知らないネタがどうせ弾けたんでしょ、はあすみません。と半ば自暴自棄になりながら聞いた。

 

『明日、一面で独自ネタが載る。』

 

「はい。」

 

『明日からの署回りで、もしネタ元とかを聞かれても一切、何も知りませんと言え。』

 

「…はい。」

 

『誰が記事書いたのかも、知りませんと言え。』

 

「はい。」

 

―――それだけーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー????????

 

そもそも本当に記事のことをなにも知らされていないのに、聞かれたとしても何も言えねーーーーwwww

 

秘密自体を知らないのに、「この秘密を言うなよ」って、なに?

 

ってかそれだけのために30分も説教されたのーーーーーーーーーーー

 

音楽で癒やされたものの、またどん底まで沈んでしまった私は、そこから小一時間ベッドの上で泣いたのだった。

 

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この”鬼電事件”は、私とデスクとキャップしか知らないことだと思っていたが、どうやらTさんも知っていたようだった。

 

年も近くて同じ大学という共通点の多いTさんなら、親身になってこの“電話事件”もアホな後輩のミスだと笑い飛ばしてくれるかもしれない。

あとイケメンだし。

 

そう思った私は、”鬼電事件”の真実を語った。

 

「・・・お風呂に入ってたって言ったんですけど、本当はイヤホンで音楽聞いてたんですよね、あはは(苦笑)」

 

Tさんの、喫茶店に向かう足が止まった。

 

「なあ、獅子。言っておくけど、入社して1ヵ月ぐらいのお前のことなんて、だれも信頼していなんだぞ

 

信頼できない部下だったとしても、上司として、もしそいつがもし重大なミスしたとしたらその責任を負ってクビになるかもしれない。

 

そういう覚悟でお前の上司をやってる。そのことを忘れるな。

 

嘘ついて信頼をデスクを裏切るようなこと、もう二度とするなよ。」

 

正論パーーーーーンチ!!(2週間ぶり2回目)

 

↓1回目はこちら

 

yutori-zaregoto.hatenablog.com

 

この会社には正論マンしかいない。

 

いや、そうなんです、1回目の女性の先輩も、Tさんの言うことも、なにも間違ってはいないんです。

 

だからこそつらさが増す。メンタル崩壊する。

 

真実をストレートに伝えることが正義ならさ、んじゃあ言わせてもらうけどさ、三浦春馬になんかまっっっっっったく似てねーーーから!!!

「うぬぼれないでください。三浦春馬に失礼です」って言えばよかったあああああ

 

YOUたちも新人のとき、いろんなミスとかしたり悩んだりしなかったんですかね?

ちょ~っと親身なって聞いてくれるだけで、それだけで「この先輩もいろいろミスしたり悩んだりしたのに、こんな優秀な記者になってる。私も頑張ろ★」って思えるのに。

 

 

きっと”鬼電事件”の真相は、Tさんの口からデスクへと伝わっているでしょう。

はあ…まーた心理戦読み合いのゲームに敗北しました。

 

新人のミスはもちろん、個人情報もなにもかも、全社員に筒抜けになりがち。

会ったこと無い警察署員から言われたこともあるよ。こわいよねえ。誰が流しているんだか。

 

新聞社に入社してまもなく2ヵ月。私は悟りました。

 

「この土地に、私の味方はいない。」

 

<続く>

広報担当者によって傷つき、広報担当者によって救われる【編集者の仕事】

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獅子まいこです。

就活生のとき、意味のない圧迫面接かましてきた企業に対して、”一人不買運動とかやったことある人、いません?

 

私は圧迫面接は受けたことがないけど、どうしても受かりたかった第一志望の新聞社(全国紙)に落ちてしまったとき、「私を採用しなかったことを絶対後悔させてやる」って思っていました。

 

まあ実際は地元の新聞社に入社して2年も経たずに辞めるんで、その全国紙の新聞社はちゃんと学生を見る目があったんだなあと感心しています。さすがです。

 

でも今でも、その新聞社からもし原稿執筆の依頼が来たら、どうやって嫌味を言おうかとか考えるほどには性格が悪い獅子まいこです。

 

そんなふうに、私は傷ついたとき、やり場のない怒りを妄想で鎮めます。

傷ついたプライドを妄想によって修復しています。

 

 

今月もまた1社、仕事で携わったとある企業の広報担当者の態度に傷ついたので、”一人不買運動”の商品が増えました。

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数年前、新聞社から出版社の編集者へと転職しました。

雑誌を作る仕事では、新聞社時代とは比較にならないほど日本中の企業の広報さんと仕事をしました。

 

そして今年、フリーランスとして独立。

出版社に勤めていた頃と同じように、毎月数十社の広報とやり取りをする仕事を担当することになりました。

 

これがマジで病む。

 

「若者に電話恐怖症が多い」と聞くけど、私はガンガンかける方で、それには当てはまらないんだけど、とにかく激弱メンタルなので態度悪い人がマジでつらい。

 

 

別に御社の不正を暴こうとしているわけじゃないのに。。。リリース対応の範疇なのに…そんな態度悪いのなんで?

言葉遣いも態度も悪いのはだいたい40代男性ということも統計済です。

 

私がフリーランスだと判明する前からそういう態度をお取りになるので、出版社名や媒体名のパワーが弱いのか…?

個人的にはそれは当てはまらないと思うから、、、う~ん。なんで?

 

忙しいとか、コロナで対応が大変っていうのももちろん分かるけど、それにしても社会人として初対面の人にその言葉遣いなのは…前世で因縁あったとしか考えられない。笑

 

この行き場のない怒りを鎮めるために、一人不買運動に勤しんでいます。

 

広報の方々(特に課長とか肩書持っている方)は、若い女が仕事の相手でも、どうか舐め腐った態度を取らないでほしいです。

めっちゃ御社の企業イメージ悪くなります。

好きだった商品が嫌いになってしまいます。

 

逆に、丁寧なやり取りをしてもらえると、ただそれだけでその企業の商品が好きになります。

 

ビール全然飲めないのに、そのメーカーのビール箱買いしたいぐらい。

親や友人へのプレゼントとして買い占めたいぐらい。

 

単細胞すぎるけど、人間ってこんなもんじゃない?

CMで好感度高い有名人を起用する理由も、それのはず。

 

 

企業広報担当者に態度悪く対応されることは、

新聞社時代に警察署の副署長から冷たい態度を取られてきたことよりも、はるかに解せない事象なので、今の気持ちをまとめました。

 

 

神様。どうか、来月は私のメンタルが崩壊しませんように。

 

「あなたは警部さんにいつもまたがっている記者ね」と言われて死ぬほど腹立った話<#5>

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2018年春、当時の財務事務次官テレビ朝日の女性記者にせまったセクハラ事件

週刊誌への告発をきっかけに、連日ワイドショーでも取り上げられた。

その後、メディアで働く女性記者たちが自らの体験を語る連載特集をしたり、本が出版されたりもした。

 

その頃、私はもう新聞記者ではなくなっていた。

けれど、このニュースが燃え上がるのと同じぐらいの勢いで、毎日、ゼミの同期で某・新聞者記者の友人(女)とLINE電話で語り合った。

このタイトルのエピソードも。

 

私は記者時代、身体的接触といったあからさまなセクハラはされたことはない。

地方新聞社の新人で、大した仕事をやっていなかったっていうこともある。

たまに、「ん?(💢)」って思うことを言われたぐらい。

 

そういう些細なことではあるんだけど、それを「大したことない」「記者だからしょうがない」って割り切れれば楽だろうなって、ずっと思ってきた。

27歳の今も、23歳だった当時も。

 

割り切れなかったので私は今、東京で、このnoteを書いています。

 

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社会部のサツ担に配属されて約1ヵ月。

自分が担当する所轄署の朝回りと夜回り、発生モノ(事件事故)の対応、交通安全イベントの取材などで、毎日クタクタになっていた。

 

その中で1番嫌いだった仕事が、そう、署回り

本当に、本当に本当に苦手だった。もう一生やりたくない。

 

発生モノでもあればまだいいけど、こんな田舎で大きな事件事故なんてそうそうない。

強面で仏頂面のおじさんと毎日話すことなんてないし、今動いているネタが有るのか無いのかさえもわからない。

っていうか”ネタ”って具体的にどんな話を指すのかすらも知らない。

右も左も分からない私にとっては、毎朝挨拶しに行って、毎晩、どうにか見つけた話題を投げかけて(ドラマやスポーツとか)、どうにか話が続くようにびくびくしながら相槌を打つのが精一杯。

これが署回りと言えるのかはさておき。(だって誰も署回りなんて教えてくれないんだもん!!!!)

 

当時、私の対応に当たってくれていた警察官の皆さんには、さぞ「ちょろい新人が来たな~」「毎日毎日何しに来てんだあいつ」と思われていたことでしょう。

 

横山秀夫今野敏の警察小説が読むのが好きなんだけど、今でもちょっと胸が苦しくなるんです。

署のトイレで待ち伏せしとくとか、深夜に庁舎を張り込んでるってバレないように、車中で男女の記者2人でカップル装ってイチャイチャしだすとか…そんなんできっこないわ(涙)。

 

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「あなたは警部さんにいつもまたがっている記者ね」

 

こうタイトルの言葉を私に言ってきたのは、警察官でも同業者でもない。

 

ある交通事故が起きて、その対応取材に当たっていたときのこと。

交通系インフラの民間企業に取材をしに行ったときに、担当者にいきなり初対面でこう言われた。

 

またがってる?!…またがってる…跨ってる…ってさ、、、、下ネタですよね?

なんか他に隠語あるの?とかぐるぐる考えたけど全然思いつかない。

 

この言葉に出てくる「警部さん」とは、私が担当の所轄署の副署長のこと。

副署長=報道対応者なので、関係を密にしておくことが求められる。

私はこの「警部さん」のもとにも、毎朝毎昼毎夕毎晩通いつめていた。

副署長が昔、私の地元の署にいたときの事件のことを話してくれたりして、私の中では1番関係を築けていた副署長だった。

 

もしかしたらネクスk…あっいや、交通系インフラの民間企業の担当者(たぶん40代)は、そうやって毎日署に遊びに()来ては、ニコニコ楽しそうにおじさん警部と話す私を見掛けていたのかもしれない。

 

つまり、「お前は警察官に気に入られるために寝てるんだろ」ってことを、、私に、、言ったって、、、、ことですよね?????

 

はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ???????

寝てねーーーーーーーーわ!!!!!!!

 

 

なんてブチ切れることができるのは今になってからなんですよね、悲しいことに。

23歳の社会人1年生が、初対面の40代ぐらいの男性にそんなこと言われても「はぁ…。あはは~」としか愛想笑いできなかった。

できることは、さっさと取材を終わらせて帰ることだけ。

取材中も、心なしか馬鹿にしたような態度で臨まれた気がする。

 

 

つらかったなー。

 

 

署回りデビューする前に、デスクに言われたことを思い出す。

 

「警察の人と関係を築けていったとしても、絶対に、女性であることを武器にするようなネタのとり方はしないように。」

 

昔からそういうふうにネタを取ってきた先輩女性記者がいるのか、とか

女性記者と幹部警察官との関係はそういう風潮があるのが周知の事実だからなのか、

だから、わたしはネクスk…あっもういいや。まあその担当者が私に言ってきたんだと無理くり理由を考えてみたんだけど、やっぱり心のもやもやは晴れなかった。

 

もしかしたら、デスクの言葉はダチョウ倶楽部の「押すなよ押すなよ」理論で、「俺はまあ上司として一応”忠告した”というポーズは取っておくが。わかったな。」っていう意味が込められていたのかもしれない。

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やっぱり、こういうもやもやは、同じ境遇を経験したであろう人に相談するのが得策だ。

そこで、私の1期上の女性の先輩に相談した。

その先輩も1年前、私と同じように社会人1年目でサツ担、私と同じ署を担当していた。つまり、彼女の去年1年間をトレースすればなんとかやっていけると思ったからだ。

 

何かとデスクも、「仕事でも仕事以外でも、何かわからないことがあったら〇〇(その先輩)に相談するといいぞ」って言われていた。

先輩はもうサツ担では無いが、年も近いし、彼女にとったら自分の分身みたいな後輩の私をいろいろと気にかけてくれていた。

ネク●コの担当者の言葉は流石にひどいと、きっと、慰めてくれるだろうと思った。

 

 

結論:甘かった。

 

 

優しい言葉遣いながらも、気が強い性格が現れる口調の彼女は、こう言った。

 

「そうは言ってもネタ取らないと、一緒だよね。

今の獅子は、無料でキャバクラをやってあげているみたいなものだからね。」

 

 

 

正論パーーーーーンチ!!

 

 

確かに、署回りを始めてから約1ヵ月、独自ネタらしいネタなんて何1つ取っていない。

毎晩毎晩、自分と仲良くなりたがっている若い娘がやって来ては、仕事の武勇伝や家族の話をニコニコと聞いてくれる。

新聞社に入っていたはずなのに、どうやらわたしはキャバクラに就職していたようでした。

 

 

学生時代にジャーナリズムを学んで、たぶんどの同期よりも高い志を持って新聞社に入った私にとって、先輩の「キャバ嬢と同じ」発言は、それが例え先輩は本気でそう思っていなかったとしても、私の心の中に“新聞記者”という仕事に対する大きな不信感を植え付けた。

 

 

――キャバ嬢はキャバ嬢でも、独自ネタ取ったら新聞記者になれるんでしょ?

 

 

次の日から、私は、深いVネックのブラウスをよく着るようになった。

 

 

<続く>

「部長にお酌求められて嫌だった」ってデスクに相談したら「それはお前が間違っている」と怒られた話<#4>

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私が新聞記者時代につけていた日記に、頻繁に登場する言葉が2つある。

 

1、「自分のことを話すな。弱みを握られるから。」(出典不明)

 

2、「敵は味方のフリをする」(出典:TBS系ドラマ「小さな巨人」より)

 

今回は、1つ目の座右の銘が生まれたきっかけとなるお話です。

……え?めっちゃ仕事できそう?それか、それこそ「小さな巨人」の長谷川博己さんみたいに出世争いでもしてそうな人の座右の銘ですよね。

 

違うんです。闇に落ちたただの20代前半の女です。

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「こいつ豆腐メンタルやな~こんなんでよく新聞社受かったな」って思うと思いますが、誠におっしゃる通りでございますので否定はしません。

 

4月下旬。

新入社員研修を終え、社会部の警察担当(いわゆるサツ担)に配属されて数日後のこと。

社会部全体での歓迎会が行われた。

 

サツ担に配属されたとはいえ、ペーパードライバーでまだ絶賛運転練習中の身分のため、なんだか肩身が狭いように感じていた。

 

 

yutori-zaregoto.hatenablog.com

 

しかも、こういう大人たちとの飲み会では、人一倍緊張してしまうタイプだった。

人生で初めてできた“上司”という人間関係の一角は、私に畏怖の念しか与えない存在。

「優等生な振る舞いをしないと」と、飲み会でのルールやマナーを事前に調べあげて歓迎会には臨んだ。

当日、居酒屋に到着後。宴会が始まる少し前にトイレに行きズボンのポケットに小さく折りたたんで入れてあった社員名簿を広げて頭に叩き込み、またそれを小さく折りたたんでポケットに忍ばせて、宴会場の席に戻った。

 

宴会場は長机が…何個ぐらいあったんだろう。

そんなことは覚えていなくて、とにかく、私の席の目の前には社会部長(50代・男)が鎮座していた。

 

・・・・・・。

宴会開始前にもう緊張の極みに達してしまう。

 

どこの会社でもそうだと思うが、新入社員歓迎会は入社2年目が幹事をすることが多い。

席決めも幹事の仕事だ。

部長と私が向かい合っているのは、もちろん「新入社員と幹部の懇親のため」という意味があって、他の同期らの近くにも次長やら局長やらが座っていた。

 

「ちゃんとお酌できなきゃ出世できない」と強迫観念に駆られている私は、机に置かれるビール瓶に手を伸ばすが、先輩社員に先を越される。

部長の一杯目が……あぁ……!

 

次は取り皿を配ろうかと、中腰のままあたふたしていると、隣に座っている経済班のデスク(30代・男)が、「まあまあ、そんな緊張しなくても、歓迎される側なんだし(^▽^)」と救いの一言を投げかけながら、おしぼりの山から1つずつ取り分けみんなに配っている。

 

「はあ…すみません。私、こういう飲み会が苦手で……。」

ゆっくり腰を下ろす。

「そういえば獅子さんって、こっち地元じゃないんだっけ?」「はい、○○市の出身で…大学は…」「そうなんだー!オレはね…」

 

「「「みなさん、お酒はいきわたりましたでしょうか~~???」」」

幹事を務める1期上の先輩たちが乾杯を始めそうなアナウンスをし始めたとき、

 

 

「おい、獅子」

「はっはい!」

 

突然部長に名前を呼ばれた。

 

お前な、おしぼりを上司の●●に配らせるな。新人なんだから、お前も気を配れ

 

「はっっっ、はい。す、すみません」

 

 

~本日の獅子まいこ、メンタル終了のお知らせ~

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心の声

👿「おしぼりってさ、人に触られたくないって人多いじゃん。私なんかが触っていいものか迷ってるうちに●●デスクが配り始めちゃったんだもん」

👿「おしぼりぐらい自分で取れるだろ、赤ちゃんかよ」

 

 

その後に誰と何を話ししたかだなんてほとんど覚えていなくて、ただただ目の前の部長のビールグラスを凝視していた。

残り4㎝~3㎝を切ると、「部長!お酌しますっっ!!!!!!!!!!!!!!!」とビクビク声震わせながらお酌した。

手が震えてるからか、泡ばっかりor泡が全然ないビールしか注げなくて、前の晩予習したことは全然生かせなかった。

 

「次のお酌こそは!」って思うんだけど、部長だから社員がかわりばんこにお酌しにくる。

宴会中盤以降、ビールグラスが4㎝を切ることがほとんどなかった。

私も、警察班のデスクやキャップ、直属の先輩たちにお酌しに回ったり、新入社員や社会部に新しく異動してきた人の自己紹介スピーチなどを行っているうちに、いつの間にかラストオーダーの時間が来た。

 

はあ…おいしそうな刺身全然食べられなかったな・・・と思っていると

斜め向かいに座っている地域班のデスク(40代・女性)に話しかけられる。

聖母みたいな微笑で、「今日は獅子ちゃんとキチンとお話しできなくて残念だったわね~」なんて言いながら、隣の部長にお酌しようとしていたから

「あ!私がお酌します!!!!!!」って身を乗り出すと、

「あら、そう?今日はあんまり部長にお酌できなかったの?私なんかより、若い獅子ちゃんがついであげた方がいいもんね~♪」と言いながらビール瓶を渡してくれた。

 

「は、はあ、すみません。」

 

すると部長は、口角を1ミリも上げることなく私の前にグラスを差し出した。

 

そうだな。今日は獅子は全然ついでくれなかったな。若いのにな。

 

 

~獅子まいこ、メンタル終了のお知らせ(本日2回目)~

 

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心の声

👿「は?全然ってなに?ついだよね?ついだよ?は?」

👿「ってかここはキャバクラか?ママと新人キャバ嬢のやり取りか?」

👿「ビールぐらい自分で注げ。赤ちゃんかよ」

 

 

まあ個人的に当時1番解せなかったのは、新聞記者でしかも部長なのにモラルないこと結構言うんだな~ってこと。

別に部長に限ったことではないんだけど、かなり「古い考え」のままの人が多い。

高校卒業後は地元を出て某首都圏の大学に通って、ジェンダー論とか男女平等とか性的少数者のこととか、少しだけど学んできた私にとって、ここは未開の地なのかと思うことも多々あった。

 

(「40歳で結婚していない男は性格に難がある」って40代の既婚デスクたちが報道局内のフロアで、大声でガハガハ喋っていたり。独身の某デスクのことを指していた)

心で思うのは勝手だけど、報道局内で言うなよ。

 

 

新聞記者とはいえ1人の人間。聖人君子な言動をすることは不可能なのはわかっている。

キリストみたいに「罪を犯したことのない者だけ(=記者)が、この女(=悪いことをした人)に、まず石を投げなさい(=記事を書いて糾弾する)」とまでは言えないのもわかっている。

 

とはいえ、例えば会社でのセクハラやパワハラで自殺してしまった人がいたら、その企業を批判する記事だって書くと思う。

こんな人たちに、本当に意義のある記事なんて本当に書けるのーーーー?

なんだかなあ。このもやもや。

 

これはのちのちわかってくることだった。

この新聞社で記者を続けるのに、こんな“無駄な正義感”と“真面目さ”を持ち合わせていては務まりません。

はあ。大学時代、就活をしている自分に言ってあげたいぜ。

 

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メンタルぐしゃぐしゃで散々な結果に終わった歓迎会の翌日。

デスク(40代・男)と2人でランチを食べていた。

 

「昨日の飲み会どうだった?部長大丈夫だった?」

 

私はこの当時、まだデスクのことを心から信頼していたので、昨日のメンタル崩壊話をしてしまった。

「元々上司との飲み会が緊張する」

「『これだからゆとりは』って一蹴してもらって構わない」ことをきちんと伝えたうえで。

 

 

私が話し始めると、デスクは次第に神妙な面持ちになり、おもむろにジャケットの胸ポケットから手帳を取り出して私の言葉を書き留め始めた。

 

ああ、私は新人だし女だし、デスクなりにきちんと受け止めてくれたんだって嬉しく思った。

「でも、そんな大ごとではなくて、私の性格の問題もありますし。こう感じるのは私だけだと思います」

 

それでもデスクは、詳しく私の心情に耳を傾け、こう言ってくれた。

「お酌ができなくても、なにも心配することはないよ。昔はこの会社にも『俺の酒が飲めないのか~!』って怒鳴る人がいたとか聞いたことあるけど、今の時代じゃ許されないからな。俺も全然酒飲めないけど、人並みに出世できてるし(笑)。

 

ほかの人にも何か言われてないか?またなんか飲みの席であったら、俺に報告して。」

 

デスクに感謝の言葉を伝えて、喫茶店を後にした。

 

 

数日後。

同じ喫茶店の同じ席で、同じようにデスクと向かい合い、同じようにランチを食べていた。

その日のデスクは急いでいたのか、咀嚼のスピードが速かった。

 

「なあ、獅子。この間のことだけど、飲み会の」

 

「は、はい。」

 

もしかして部長に言って謝罪の言葉でももらってきたの?そこまでしなくていいのに!!!そんなに大ごとにしないでって言ったのに!!と、心臓の鼓動が早まる。

 

 

「俺も考えてみたんだけど、部長はそんなことする人じゃないと思う。

 

 

・・・・・?

 

 

「この間の歓迎会は、獅子の態度が間違ってたんじゃないの。部長からお酌しろって言われて、嫌って思うお前の方がおかしい。」

 

 

・・・・・・・・?

・・・・・・・・?

「そ、そそうですよね。すすすすみません」

 

パワハラとかアルハラとか、あんまり……そういうことは。な?」

 

言外の圧力を感じた。

 

な?

 

「あと、上司との飲み会が苦手とかいうの、俺もそうだけど会社の人に言うのはよくないぞ」

そう言うと、デスクは立ち上がり、食事中の私を残して、会計を済ませ喫茶店を後にした。

 

 

 

――負けた。

 

 

デスクにとって、私と部長の信頼度でいったら

私<<<<<<(∞)<<<<<<(越えられない壁)<<<<<<(∞)<<<<<部長

なのに、なぜ部長を悪く言うようなことを打ち明けてしまったのか。

迂闊だった。

 

この勝負(別に部長と戦ってなんかないけど)、デスクが私の味方についてくれる可能性なんて皆無だった。

なぜ気が付かなかったのか。

「なんでも話してみて」って言われて乗せられた自分がバカだった。

 

 

この勝負に負けたからと言って、別に出世が立たれるとか昇給できないとかそんなデメリットはない。

デスクが「獅子が部長のことこういう風に言ってましたよ」って告げ口してようがしてなかろうが、そんなことはどうでもいい。

 

「人を信じられなくなっていく。」ただそれだけ。

 

社会人1年目。精神的にも肉体的にもタフな仕事が多い新人新聞記者にとっても、

23歳女性としての日常を過ごすうえでも、かなり致命的なものを失っていくきっかけとなる出来事だった。

 

 

デスクに失望した私は、数週間後に行われたサツ担メンバーの飲み会をボイコットする。

(この話を入れようと思ったけど、長くなりそうなので割愛。)

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自分のことを話すな。弱みを握られるから。」

 

 

この呪縛から解き放たれたのは、この後転職した出版社での人々との出会いがあってから。

「社会人になっても、人って信じていいんだ~!☆彡」って驚いた記憶がある。

 

 

デスクの言葉以外にも、出身大学が同じ先輩(男)、一見優しそうな先輩(女)、同期たちなど、私の心を閉ざす一因を作ってくれた人はたくさんいる。

だからって、当時も今も、彼らのせいだとは思っていない。

当時は「この世に生まれてきた私が悪い」って思っていたし(愚痴はたくさん言いましたすみません)

今は彼らの言動は「新聞社で働くには必要な素質」と思っている。

 

 

世の中のことを知れて、人の痛みがわかる人間になれたから、

私は新聞記者になったことも辞めたことも、全然後悔していない。

 

<続く>